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[5] 「蓼科~春日の森~プロジェクト」




■■新たな森との出会い■■2012年10月

■軽井沢の事務所でいつものように雑談をしていますと突然、そういえば望月で土地の話しがあるんですけど、みたいな、へぇ~、みたいな感じになって、

■望月ってどこですか、春日の方ですよ、春日ってどこですか?春日温泉の春日、じゃあ地図見ますか、ええ見たいです、と進んで、

■その地図(地形図)に描かれた等高線の曲がり具合を見た瞬間その地形がイメージとして頭に浮かんできました。そしてその場所が気に入ってしまいました。

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■■地図を読み解く■■2012年10月

■その場所は千曲川の支流に別の小さな支流が合流する場所の近くにありました。小さな支流はすぐ上の場所から流れ始めているようでした。

■地形図によると蓼科山の北側斜面、標高1100mくらいのまさに山の中といった感じ。

■等高線の間隔が狭く山としては急な斜面のようでしたが、敷地の下半分くらいは逆に急に緩やかになっていて、その後傾斜は千曲川の支流に落ち込んでいきます。

■山が急峻なところから急に傾斜が緩くなれば、そこでは山に浸み込んだ伏流水が湧き出ている可能性が高いように見えます。どこかに湧き水が期待できるのではないかと、ちょっとワクワクしました。

■そして、これから見に行きます?となって、ええお願いします、と。

■車で50分くらいでしょうか、その場所に着きました。2012年10月終わり頃でした。

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■■湧き水を発見■■2012年10月

■山歩きに慣れていない私たちにとっては歩くことさえも困難な状況で何度も足を滑らせながら、まずは敷地の外周を確認するために上ったり下ったりしてやっとこさ一周できるようなそんな荒れ果てた山の状態でした。

■敷地の中ほどに下りてみると地図で見た通り傾斜が緩くなっていました。藪に行き手を阻まれながら掻き分けて進んでいくと崖のような部分にたどり着きました。

■そして崖の足元からは期待した通り湧き水がちょろちょろとあふれている様子が見えました。

■その周辺は枯れた落ち葉とか枯れ枝とかツルとかで覆われていて地面はぬかるんでドロドロ、長靴を履いてはいましたが足を取られて転びそうなくらい、ほぼ湿地帯でした。

■蓼科山に降り注いだ雨が地面に浸み込み地下水として長い時間をかけて伏流水として流れてきて、今この場所でやっと地上に現れた湧き水なのでしょう。

■そしてその湧き水はせせらぎとなって千曲川の支流まで流れていっているに違いありません。

■地図を初めて見た時からわずか3時間くらいの出来事です。

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■■新たな森との出会い■■2012年10月

■秘密の地図を頼りに暗号をひとつひとつ解いてやっとこさ宝物を発見する冒険物語には少し時間が短か過ぎる感じですが、そんな宝探しの旅をして宝物を発見した喜びがありました。

■おそらく何百年もの昔からこの水の流れは変わらずあったと想像できます。

■さらに探索を続けると、湧き出している場所も何ヶ所かあってそれが複雑に流れている上に枯葉や枯れ木に覆われて、実際にはせせらぎの流れを見通すことは難しい状態でした。

■荒れ果てた森でしたので樹木が何本も倒れその上にさらに樹木が倒れ太いツタが絡まりついてせせらぎの上に覆い被さり、何十年間もの落ち葉が堆積して流れをせき止めてしまいその一帯は湿地帯のようにどこもぬかるんでいました。

■その一帯は白樺の樹が多く見られ倒木も白樺が多かったのですが、このままではおそらく今は普通に立っている白樺もまた他の倒木のように倒れてしまうことは明らかでした。

■最初は自分がどのあたりにいるのかさえもわからないくらい見通しがききませんでしたし感覚的に位置がつかめませんでした。ちょっと大袈裟ですが山で遭難するときの感覚に近いかもしれません。

■そんな状態でもこの荒れ果てた森の価値は明らかでした。敷地面積はほぼ1万坪でした。

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■■「森の再生」とは何か?■■2013年

■どうやったら「森の再生」を実現できるのか?プロジェクトは始まりました。

■全体を把握するために知り合いの造園業者さんに来てもらい森を見て回り意見を聞くことにしました。

■同時に湧き水がどんな水質なのか水質検査をしてみることにしました。

■飲用水としては一点のみNGでした。大腸菌です。水質検査機関に問い合わせたところ、おそらく動物たちの水場になっていると思われるのでかれらの排せつ物が原因でしょうという見解でした。

■確かに湧き水の流れ出ている周辺には動物の足跡らしきものが多数見られましたので、間違いないかと思われます。

■採水を湧き水のたまり水で採ったため紛れ込んでしまったと思われます。もっと奥の動物が近寄れない場所で採水をして水質の再検査をしてみる事にしました。

■規模が大き過ぎて造園業者では手に負えないという結論に達しました。せせらぎの手入れとか下草刈りとかは何とかできたでしょうが、おそらく300本ほどになる樹木の間伐は難しいと思えました。

■そこで考えたのが森林組合という人たちのことです。今までの生活、仕事も含めて森林組合さんとは全く縁のない人生でしたが今回のこの規模はそういった規模なのではないかと考えました。

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■■森林組合に相談する■■2013年10月

■森林組合さんにこちらから連絡をして現地で打ち合わせをさせて頂きたいということをお願いしました。

■そして現地で打ち合わせ。

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■■綿密な計画を立てました■■2013年10月

■その後、何回も打合せを重ねた結果、まとまってきた内容は次のような感じです。

■敷地全体を植生などの特徴から大まかに4つのゾーンに分けられそうです。全体を一律で間伐するのではなく、ゾーンの特徴に合わせてちょうどよい程度で間伐をする計画です。

■1割程度の場所もあれば3割程度の場所もある、というような臨機応変な対応をしてもらいました。

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■■湿地帯ゾーン■■2013年10月

■湧き水の流れがせき止められ湿地帯になってしまっている。広さ的には全体の10分の2程度です。

■湧き水からの流れがつくる湿地帯をせせらぎに戻す。ほぼ湿地帯ですからまず地盤を乾燥させなければならないということが大切です。

■そのためには水の流れをキチンと決めてそれ以外の流れを他に分散させないよう計画を立てました。

■前作業として、倒木の処理片づけ樹に絡まりつき行く手を阻むような太いツタの処理撤去が必要です。

■水の流れがきれいですから水辺の樹や石などには美しい苔が育っています。そのそばにはカエルも生きていますので、それらを大切に残しながらの作業になります。

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■■雑木林ゾーン■■2013年10月

■敷地北側にはナラを中心とした中低木ゾーンがあります。広さ的には全体の10分の2程度です。

■割と日当たりが良く雰囲気も良いので、倒木の処理と下草を刈るのみとして雑木林風に中低木は基本残す計画にしました。

■ただ下草刈りをしますと草以外に小さな実生の樹なども刈り取ってしまいます。それを避けるため主に2m以下の落葉広葉樹の雑木を軽井沢の森に避難移植する計画にしました。全体で200本くらいになります。それからビーバーで刈り取りをすることにします。

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■■カラマツゾーン■■2013年10月

敷地東側には30年くらいのまだ若いカラマツの人工林ゾーン。広さ的には全体の10分の3程度です。

■製品として出荷できるまでには後10年20年かかりそう。3割くらいの間伐をする。

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■■巨木ゾーン■■2013年10月

■敷地真ん中あたりはナラの巨木群があります。広さ的には全体の10分の3程度です。

■これらの巨木群はそれほど本数は多くないのですが、まるで大きなドームのように空を覆って内部に空間を囲い込んでいるようです。

■この巨木群の足元をせせらぎが流れをつくる計画です。

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■■作業道について■■2013年10月

■作業道のような道は前から一本ありましたがトラック、重機の類いはそれ以外の森には入らないこととし、8輪車と言っていたタイヤが8つ付いて全くスピードの出ない車を使って他は全部手作業で施業をお願いしました。

■作業員の方には大変面倒なお仕事をお願いしたと思っております。

■今回のような間伐作業は条件が合えば国からの補助金で全額負担してもらえる制度ができたそうで、森林組合さんからも勧められたのですが、おそらくいろいろ我儘な注文もしないといけないのではないかと予測できましたので、補助金無しで進めました。

■何度も打ち合わせを重ねて計画を作り上げ、着工を冬の雪の降る前の樹々の葉っぱが落ち切ったタイミング、ということで11月~12月の頃合いを見計らって、と決まりました。

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■■作業道について■■2013年12月

■2013年11月~12月、計画に沿って敷地の整備施工。無事完了。

→詳細は別紙でご報告します。

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■■自然に手を入れて自然を再生する■■2013年12月

■湿地帯が整備され見違えるようになりました。

■どこに流れがあるのか探しても見えない状態だった場所が、2か所からの湧き水の流れが複雑に合流したり分かれたりまた合わさり分かれというように、わざと作った形ではなく地形に合わせて何百年という時間をかけてできてしまった流れに、自然の美しさが見えました。

■そして太陽の光が届かない暗い森だったものが明るく生まれ変わりました。 春になって太陽が地面に光を降りそそぐようになれば元気の無かった樹木たちも生き返るでしょう。

■この場所は野生動物の実際の生活区域になっているようで、何本ものケモノ道が森を通り抜けていました。途中には鹿がツノを磨いたのでしょうか、樹の幹が鋭い刃物で抉り取られたような傷跡もあちらこちらに見られました。

■今後どのように森とその仲間たちを見守っていくべきか深く考えていきます。 鹿、サル、イノシシ、他小動物、鳥、カエル、虫等々。 かれらの水場、餌場になっていることは間違いなさそうです。クマはここの場所はどういうわけか迂回していてあまりいないそうです、

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■■軽井沢の森に移植する■■2014年5月



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■■2年目の森の小川の手入れ■■2014年11月

■2014年11月、薄っすら雪化粧の中、森林組合さんに2年目の森の手入れをしてもらいました。水源からの小川廻りの落ち葉掻きが主たる作業でした。

■この作業は以前の湿地帯に戻ってしまわないように毎年続けないといけません。

■今は森林組合さんにお願いしていますがいづれは自分たちの手で手入れができるようにしたいです。

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■・・・つづく





 


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■ 更新: 2018年12月20日 (木) 9:52 project

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